アナウンサーとレポーターの違いは何か
運営者 その他のワークフローの話に進みましょう。
三神 先ほどは取材先の選択と独立性の確保に部分的に触れましたが、「書き手や言論を発信する人の職業区分」という問題があります。
その書き手がジャーナリストと名乗ってはいるけれど、広告タイアップの記事も書いているといった場合、その人の言論とお金の関係がどのように信頼性保持の観点から担保されているのか、という問題ですね。
現時点では、名乗っている職業名と扱う情報種類とお金の流れとの間に整合性が取れていないので、メディアの情報に触れる人々には非常にわかりづらいですし、業界内でも「まあそのへんは曖昧だよね」「本人が自由に名乗るものだからいいんじゃない」とお茶を濁した答えしか返ってこない。
柔軟性を持たせておいたほうがいい、という考え方や、個人のキャリアを自由に広げる意義もありますが、情報信頼性を担保する観点で整理すると、何でも許容して十把ひとからげにすることには疑問があります。
運営者 メディアの周囲には、たとえばどんな職業名がありますかね。
三神 業界内の現状として、取材した範囲で整理をしてみますと、まず記者がいますね。記者とは、特定の媒体に所属している発信者のことです。基本的には文章で情報発信をします。言論というよりも事実ニュースの速報性を重視した、標準化された文章表現の訓練を受けています。放送原稿と活字原稿の場合がありますが、いずれも記者という表記になります。
アナウンサーは、記者の書いた原稿を正確に時間内に読む専門職がそもそもの興りで、言論内容に関しては二つの考え方があるようです。伝達する情報内容の文責は記者にあって、アナウンサーは自分の見解を言ってはいけない、そのかわり使用されている単語に対しては、アナウンサーの誤読などを除いて、アナウンサーは責任を負わないという考え方。これはスタジオで原稿を読む仕事が多い方に見られる認識です。
一方、屋外のロケを伴う現場からのレポートをこなす場合は、どういう単語を選択するか、表現方法に関してはアナウンサーの自由だという人もいますし、先輩アナウンサーの意見に従うべきだという人もいます。その代わり、どのような情報を提供するかの方向性は、ディレクターや番組トップにあたるプロデューサーが判断するという考え方ですね。情報の信頼性担保への関わり方が、単語の選択と見解の有無とその他で微妙に住み分けられています。
運営者 なるほど、編集権を持ったキャスターをアンカーパーソンといいますが、そういう概念は日本では現実的ではありませんね。それからレポーターというのもいますな。タレントもいる。