変化しつつある中央銀行の役割
瀬口 そんなことはないですよ。日銀という機関が意思決定をする責任というのは、本来日銀が取らなければならないものです。
運営者 日銀は独立性のある機関ですからね。そこが他の役所と違うところで。
瀬口 でも金融政策をまちがったからといって日銀の職員が責任をとって全員辞めたら、中央銀行の仕事をする人がいなくなっちゃいますよね。
運営者 それは困る。かなりな専門性が必要な仕事ですから。
瀬口 そうすると日銀はどうやって責任をとるのかと考えたときに、政策決定の最終判断には外部からの余計な圧力や干渉を避けることが前提ですが、それでも日銀が責任を取るためには、自分たちの議論のプロセスをすべて公開するしかないんですよ。
どういうプロセスで金融政策を決定したのかということをオープンにすることによって、自分たちの議論のプロセスがまちがっていた場合には外部からの批判がどんどん出てきますから、政策を変えるしかないですよね。それでもなお政策を変えなければ、「日銀はおかしい」ということになるでしょうから、もっとも極端なやり方として、国会で日銀法が改正されて独立性が奪われることになると思います。
運営者 そういうことですね。
瀬口 そういう最終手段があるわけですから、そんなことにならないように日銀の職員は全員努力しなければならない。ですから議論のプロセスを公開し、「こうやってオープンに議論しているんだから、最後の決定のところは干渉をしないでください」と言っているわけです。
運営者 なるほど、日銀というのは議院内閣制の下において、官僚機構がトップに国会議員である大臣や副大臣を置いているガバナンスになっているのに対して、特殊なポジションにありますよね。
瀬口 それは先進国において歴史的に生まれてきた知恵で、金融政策を政治家の手にゆだねてしまった結果、大変なインフレーションを招いてしまった経験が何度かありました。そこでそのようなことが起きないように、中央銀行には独立性を確保することにより、クールな目で経済を眺めてミスをしないようにするというのが各国に中央銀行が存在する一番大きな目的だと思います。
ただ、現在は世界的にデフレ的傾向にあります。デフレに対して金融政策はあまり利かないんですね。それは最近の日本の状況が証明しているわけですが。
そうするとどのようにして世界的なデフレ的傾向に対処するか、そして日本が抱えている構造問題に対処するかという問題が出てきます。