中央銀行は「経済の良心」である
運営者 どうすればいいんでしょうか。
瀬口 私見ですが、僕は中央銀行は「物価の番人」である前に、「経済の良心」であるということを忘れてはならないと思っています。政府の機関は自分たちに与えられた執行権限の範囲の中で仕事をしていて、しかもそのひとつひとつは議員内閣制の政治家のコントロールの下でしか動けないという政策執行機関としての制約があります。日銀が同じような制約の下に置かれているのであれば、様々な利害が錯綜する金融政策を中立的に運営することはできません。だからこそ日銀法によって独立性が保証されているわけです。そういう中立的な立場を活かしてマクロ的視点から経済政策全体を考えて方向を示していくというシンクタンク的な機能を果たすのが21世紀の日銀のあるべき姿ではないのかと思っています。
運営者 経済政策シンクタンクですね。
瀬口 これも私の個人的な意見ですが、日銀は「物価の番人」としての役割も当然果たさなければならないのですが、それと同等に「経済の良心」としてシンクタンク的な役割を果たすことが大切な役割になっていくと考えています。実際にグリーンスパンの演説などを聞いていても、社会保障政策とか、財政政策についても相当積極的に発言をしていますし。
運営者 ITについてもそうですよね。ニューエコノミーということで。
瀬口 イタリアの中央銀行の総裁も、金融政策以外の分野の政策についてかなり積極的に話しています。これに対して、日銀の発言は残念ながら金融政策関連分野に限られる傾向が強いように思われるというのが私の見方です。これまでは日銀本来の政策分野である金融システムの問題についてもあまり踏み込まない傾向があったと思います。中央銀行が「経済の良心」としての機能を発揮するのが望ましいという観点から言えば、金融政策以外にも、金融システム、そして経済政策全般にわたり積極的に発言していくことが必要ではないか、というのが私の個人的な思いなんです。
運営者 まあ、縄張り意識の強い連中は、拒否反応を示しますよね。なぜ連中が情報を隠匿しオープンな議論を好まないかというと、自分の縄張りと利権を守りたいがためですから。瀬口さんの意図が理解できない人は多いと思いますよ。