リーダーにはパブリックマインドがあってほしい
瀬口 そもそも「人の上に立つ」ということがどういうことなのかということ自体が難しいことだと思うのですが、少なくとも中央政府で働いている官僚たちは、多くの人たちから「人の上に立っている」と思われていますよね。だからみんな、その人たちのいうことを尊重しようという気持ちを持っていますね。
運営者 お上を信用してますよ。少なくとも政治家よりは信用されているように見受けられます。
瀬口 そうしますと例えば、税制を考えている役人が、どれだけ日本のことを身をよじるような思いで考えているだろうか。もしくは金融庁の役人が、自分の出世のことではなく、本当に日本の金融システムのことを考えて苦しんでいるだろうか。文部省の人間が本当に日本の将来を考えてさ教育行政をやっているか。厚生労働省や国土交通省の人間が、将来の日本の発展を考えて、社会保障政策や、公共事業政策を考えているか。
というと、ストレートに「自分自身はがこれが一番いい政策だ」と考えていることを実際に実現しようとしている人は多くないような気がするんですね。
運営者 そういう意味では、僕の友達は財務省を辞めた人が多くて、彼らの話を聞くと、やっぱり役所の中ではそういうものの考え方はしていないという様子が伝わってきますね。「これはちょっと自分が考えていたところとは違うんだ」という幻滅感を持って辞めていくようです。考えてみたら、僕自身そう思ったから前勤めていた会社を辞めたわけですから、辞めた人間はそう考えるから辞めるのですが。
はっきり言って、役人が入省して最初に「われわれの目的はこれだ」と教えられるのは、予算を取ってくる、新しい法律を作る、人員を増やす、天下り先を増やす、この4つです。そこには国民の姿はないですよね。
瀬口 それらの目的が、本当に日本国民のためにどのくらい必要なのかということを、考えているのかな。
運営者 そこは多分プライオリティーの問題で、「日本国民のために仕事をやるのは当然です。しかしファースト・プライオリティーは、われわれの利権を増やすことのほうですよ」ということでしょう。それを徹底して叩き込まれるわけですから。
瀬口 そうであるならば、人間の基本ができていないということじゃないですか。
公僕としておかしな仕事をやらされた時に、「これは人間としての基本にもとる」というふうに思ったら、それに対して抵抗するのが、リーダーの本来の姿のはずです。