指導層は利益誘導と利権獲得しか経験していない
瀬口 しかし時代としても、官僚が世の中をリードするという状況ではなくなっています。そういう思いを役人が持ち続けることが、構造的にむつかしくなっているのも事実です。ですからそういう役人が少なくなるのは流れとしては悪いことではないのかもしれません。
しかしさすがにどこにもいないというのは困りますね。官僚組織以外のどこかにそういったリーダがいなければならないんです。政治家とか有識者とか経済人とか。どこかにパブリックなトピックを考えて、自分や自分の会社の利益よりも社会のことを考える人間がいなければならないと思います。
そういう人が少ないのが、今の日本の大きな問題なのではないでしょうか。
そしてそれは教育の欠陥が大きいのではないかと僕は思います。
運営者 さっき瀬口さんは、「子どものころに人に何かをしてあげて喜ばれた経験があって、初めて公的なものに対する感覚が身につくんですよ」とおっしゃいましたよね。
社会人になって組織に入ってからも、やはりそういった経験が追加され続けられていって、パブリックマインドが強化されていくはずだと思うんです。ところが、役人や政治家になってそういった経験が得られるでしょうか。何か大きな変革を実行することによって、実際に国民の福祉が大きく増進されたということを身をもって経験することができれば、パブリックマインドが強化されるんだけど、彼らがやっているのは利益誘導とバーターになった利権獲得だけであって、それで得られるのは私益の満足でしかありません。
現状のこの国は、三すくみ四すくみになっていて、「変革の志」があってもほとんど何も変えることができない。縦のものを横にすることすら不可能かという状態ですよね。そうした状況の中では、そうしたパブリックマインドを持ち続けることの方が無理なのではないかという気すらしてきます。
瀬口 他人に「パブリックマインドを持ち続けろ」と言われなければできないような人間は、そもそもリーダーではないのです。
運営者 「器」でないということですね。
瀬口 リーダーは、パブリックマインドを自分で持ち続けることができなければならないでしょう。
そうしたまともなリーダーになり切れない人間が、社会の要所で権限を握っているから、日本はおかしくなっているのだと思います。
運営者 そうですね。