指揮:ジャナンドレア・ノセダ
トリノ王立劇場管弦楽団・合唱団、新国立劇場合唱団
ソプラノ:バルバラ・フリットリ
メッゾ・ソプラノ:ダニエラ・バルチェッローナ
テノール:ピエロ・プレッティ
バス:ミルコ・パラッツィ
リッカルド・ムーティ演奏会(東京春祭オーケストラ)、ネッロ・サンティ演奏会形式《シモン・ボッカネグラ》(NHK交響楽団)に続いて、今月3度目となる本格的なヴェルディ演奏を楽しめることになりました。
ノセダの指揮には派手さはないものの、紡ぎだされるのは、ダイナミズムのはっきりした骨太の音楽です。冒頭のピアニシモは本当にかすかな音から始まり、ディーエス・イーレは熱気にあふれた爆発。これぞナマで聴く醍醐味、と感じさせてくれる振幅の大きさ。早めのテンポでぐいぐいたたみかけるところは、少しトスカニーニのスタイルを思い起こさせます。
合唱団は日伊混成チームでありながら、ディクションも明晰で、非常に厚みのある響きを聴かせてくれ、完全に掌握されたオーケストラとともに、あの大理石でできたミラノの大聖堂を彷彿とさせるような「音の大伽藍」を見事に構築していたと思います。
厚みのある声だけでなく、サンクトゥスとリベラ・メでのフーガなども細部まできちんと織り上がった織物をみるようでした。
Tuba Mirum(驚くべきラッパの響きが)の場面で活躍するエキストラのEs管のトランペット4本の配置は、公演によって舞台袖であったり客席後方であったりといろいろなやり方がありますが、今回は舞台後方の合唱団席の横手前であったので、ひときわ輝かしく派手なラッパのファンファーレとなりました。
開演前に、フリットリの調子が万全でない、というアナウンスがあり、実際彼女は、合間合間に何度も水を飲むなど、かなり喉の状態を気にしていましたが、高音はしっかり響きを保っており、ほとんど破たんなく歌いきったのは立派です。もっとも、最後の「リベラ・メ」のソロについては、もともと彼女の声質では万全の体調であったとしても中低音域が十分でないことはわかっていたので、そのわりには健闘していたと感じた次第です。
力強い低音を響かせるバルチェッローナの歌唱には全く不満はありません。テノールのプレッティも輝かしい声でなかなか良かったと思います。
ソリストの中では、バスのパラッツィが美声ではあるものの若干弱かったのが残念です。見た目もバス歌手にしては珍しく4人の中で一番小柄だったので余計に非力であるように感じてしまったのかもしれません。