「ワルキューレ」2
運営者 あと、第2幕でジークムントとブリュンヒルデが話しているシーンの一番最後で、「じゃあ、私はあなたの味方をする」といって、簡単に神々の長であるヴォータンの命令を破ってしまうというのもよくわからない。
手塚 それはね、女性の弱さだよ。
運営者 でもあの音楽も盛り上がりますよね。
手塚 女が男に惚れたときには、何も考えずに行動するということ。
運営者 じゃあ、ブリュンヒルデはジークムントに惚れたんですか。
手塚 それはそうでしょう。ただしそのジークムントにはジークリンデがいたために、彼女はジークムントと結婚することはできなかったけれども、「その代わりあなたの息子(=ジークフリート)をいただきます」と、こういうことですね。
運営者 そう解釈すればいいのか。でもさぁ、神聖な「ワルキューレ」にとってヴェルズンク族なんて、下等な種族じゃないんですか。「英雄」だったらいいのか。オンナは……。
手塚 下等と思うか、純粋だと思うかなんだよ。つまり何か自分が信じているもののために生きている人たちかどうかということ。
何が男の魅力かというと、崇高な世界のために生きているのがいいのか、それとも金儲けのために生きているのがいいのか。ヴェルズンク族というのは、基本的には美しいものために生きている男たちなんです。
運営者 そういう設定になっているし、またそういうセリフがブリュンヒルデの口からも出ますね。
手塚 これはだから、女性が男の何に魅力を感じるかということに関して、すごく根源的なことがちゃんとあそこで描かれているんだと思う。
それからね、「指輪」をまじめに分析すると、ブリュンヒルデとジークフリートの関係は何だと思う。
運営者 ああ、わからないんですよぼく、何ですかねそれ。知りたいですよ。
手塚 いとこでありながら、夫婦でありながら、叔母と甥でもあり……非常に変な関係ですよね。
「ワルキューレ」の第3幕では、自分がこれから結婚する彼氏を、彼女はお義母さんに産ませようとしているわけで。
運営者 ここに便利な「指輪」関係の相関図が……。