フランコ・ゼッフェレルリ
運営者 ところでオペラの演出で面白かったのってありますか?
手塚 それはやっぱり、ゼッフェレルリでしょう。
運営者 「トゥーランドット」ですか。
手塚 2回見た。メトロポリタンで。最初は、グルベローヴァだった。
運営者 けしからん。いいなぁ、いいなぁ。
手塚 あれは本当に素晴らしいよ。第一幕の第二場に舞台転換すると、客席からウォーって感嘆の声があがるからね。それから、東京文化で観たミラノスカラ座の「ボエーム」。
運営者 僕はウィーンで観ました。2階建ての舞台ってあそこでもできるんですか。
手塚 できるんだよ。ちょっと小ぶりなのかもしれないけど。でもそれよりもなによりも、一番拍手が出たのは、第3幕の……・。
運営者 雪ですか。
手塚 そう。幕が開いた瞬間に、身も凍えるような青い光が当たっている中に雪がチラチラと舞っていてね、そこにフルートの思わず肌寒くなるような音が……。あれはすごいよ。音響と視覚イメージが全く同化している。
運営者 その極寒のところに、病身のミミがやってくるんですよね。
手塚 「これじゃ肺炎にもなるだろうな」と。プッチーニをバカにしてる人もいるけれど、すごいと思いますよ。ワーグナーの楽劇的な手法をそのまんまイタリアに活かしている。ライトモチーフがあって、使っている和音というのはすごくゴージャスで。
運営者 旋律がきれいですよね。
手塚 ヴェルディほどしかつめらしくなく、ちゃんと宝塚歌劇のようなお涙頂戴をやる。イタリアオペラというのは、声が出ていればいいという世界であれば、ああいう方が受けると思うよ。「トスカ」もそうだし、「ボエーム」もそうだし。
ヴェルディのシェークスピアをやるよりはいいんじゃないの。
運営者 いやいや、イタリアオペラはやっぱりヴェルディですよ。愛国心とつながってるから。
手塚 「ナブッコ」ですか。
運営者 「飛べ我が思いよ金色の翼に載って」。略して「きんつば」。ヴェルディ自身もすごく愛国者でまじめな人だったらしいですね。僕はどちらも好きですけど。
手塚 ドラマツルギーという意味では、多分ベルディの方がすごいんだろうね。音楽の緊張感とか。オテロの最後なんか凄いよね。だけど声の点で言うとプッチーニの方が、聞き映えるするかな。好き嫌いの問題だけど。